Atelier AIGAIO

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 5世紀の製作者との対話

<<   作成日時 : 2008/11/23 21:09   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

アンドニスの工房で作業をする時には、
私の拙いギリシャ語で会話をする。

他愛もない会話なら問題ないが、
作業の中で一番難しいのは
『理解している』ことを伝えること。

言葉では、オウム返しにする以外に説明しようがなく、
場合によっては『理解している』ことを信じてもらえないことも度々起こる。

多少時間はかかるが、私が『理解している』というのを
実際製作してみせるのが最もよい方法だと、最近発見した。

そんな毎日を送る中、
コミュニケーションを図る上での手段が
言葉よりも、作業の方がスムーズになっていった。


アギアソフィアのキリストは、
よくよく見ると、おかしな点がたくさんある。

頬骨が張りすぎじゃないか、
鼻や目に対して口が小さすぎじゃないか、
鎖骨の位置が上すぎじゃないか、
髪の毛の部分だけが、顔や体と比べて光の当たり方が逆じゃないか、
右頬のテッセラの流れ方がまずいんじゃないか、

『なんで、こんな事したの?』
作業中は、次々とそんな疑問が生まれ続ける。


しかし実際作ってみると、当時の製作者の考え方が理解できた(ような気がした)。
『ここで、ちょっと冒険してみたくなったのかな』
『ここ、考えすぎたんだな』(←これが一番多かった)


モザイクは完成したものを見る分には、それなりに見えるものである。
しかし製作者から見ると、改善点はいくらでも見つかる。
だが、改善点が見つかっても、その作品そのものに手を入れたり、一から作り直すのは非常に困難である。

例外はもちろんあるけど、このキリストに関してはそう思う。

オリジナルがそもそも傑作なので、あまり変更はしないようにしながらも
彫刻畑の私が、あまりに耐えかねる部分は変えた。
(額を少し狭くしたり、唇を少し大きくしたり、など)

コピー(復元)の仕事は、
1500年以上続いているビザンティン美術の一部でもある。
探せば、このキリストの復元作品は数え切れないほどあるだろう。

いい加減な修復で、テッセラが剥がれ落ちた部分に
乱暴に顔料が塗られている箇所もある。
宗教上の理由から塗られた漆喰を剥がす際、テッセラも一緒に剥がれてしまっている部分はもっとある。

もしも、このキリストの復元作品を見かけることがあったら、
この破損部分をどうカバーしたのかを観察するのが
楽しみだったりもする。
変更点も、オリジナルを守った部分も興味津々だ。


製作中の様子
画像

目を入れる時は、いつも緊張する。
緊張を紛らわすため、額も埋めてみたりする。
オリジナルは額が横に長く光が当たりすぎている感じがしたので、
色を濃く、影を多めに入れたりしたんだけど
どう効果が出るかは完成するまでわからないので先に進む。


画像

片目を入れた時点でものすごく怖くなって、必死で他の場所も埋めていく。
夜中に目が覚めて、片目しか入っていない顔を見ることを思ったら、集中力が異様に高まった。

口は、テッセラの数は30個くらいだったと思うが一日かかった。
オリジナルの、極度なおちょぼ口が許せなかったのと
テッセラが剥がれた部分も絵の具で塗りつぶしてあったので、他の部分と釣り合うように変更。
テッセラの色と配置のちょっとした違いで、キリストが激怒したりニヒルに笑ったり
親指立てて『good job!』ってさわやかに笑ってそうに見えたりと、本当に苦労した。

このオリジナルモザイク作品が傑作と言われる所以の一つに、
右半分(このブログで載せている画像で、向かって右)が懺悔を促すような、静かに叱咤するような表情、
左半分が、全てを赦すかのような優しい表情
を含んでいるという世論がある。
なので、口の表現だけでニヒルに笑ったり激怒していてはいけないのである。
この二つの表情は、口は無表情を保ち、右目と左目で表したい。
ひょっとして、髪の部分だけが光の当たり方が逆というのも、
右は厳格に、左は温かく、という製作者の意図があるのかもしれない。


画像

当時の作業風景。
右下に、製作途中のミミズクが。
なかなか手をつけられない。

設定テーマ

注目テーマ 一覧

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文